アルコール依存症本人を抱える家庭生活は、殊にお子さんへの影響が大きいのは言うまでもありません。大人であるパートナーや親御さんは、対応せざるを得ない、また、大人であれば、ストレス・コーピングや趣味や外出して場を移したりと自分で気分を変えたり相談をしたりできます。しかし、お子さんは自分で、環境を変えることはできません。大人の半年、1年は我慢のできる範囲としても、6歳のお子さんの1年は、人生の1/6を占め、そのあいだのつらい思いを、しかたがないとはいきません。成長発達にも大きな影響があります。
ですので、保護者や大人が、お子さんの時間や気もちを護り、支援し、アルコール依存症家庭にあって、レジリエンスをもって育っていくことを望みたいです。アルコール依存症の家族がいると家庭内で諍いが増えがちです。両親の喧嘩を子どもに見せるのは面前DVであり、虐待です。
面前DVとは、暴力をふるうのでなくとも、子の前で配偶者への暴力行為を見せる、子の前で配偶者に暴言を吐く、子を配偶者から取り上げる、配偶者の悪口を子に吹き込んだり、言わせたりする、子に危害を与えると言って脅す等が含まれます。
また、近年、問題になってきている「ヤングケアラー」は、「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものこと。責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまうことがあります」と厚生労働省HPに定義されており、「アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している」子どもはヤングケアラーであり、スクールカウンセラーにおいても、学校等でヤングケアラーであるとわかったなら報告することになっています。
お子さんのことで不安や困り感があれば(自己肯定感が低い、コミュニケーションがうまくできない、発達障害ではないか、過剰適応ではないか、不眠、場面緘黙、吃音、チック、不登校、ゲーム依存、ネット依存、生活習慣の乱れ、等)相談機能を利用していきましょう。
お子さんの年齢に相応した相談窓口・相談機能があります。
就学前であれば、保健センター等の相談窓口、福祉事務所、児童相談所、子ども家庭支援センター、各自治体の教育相談センター等、妊娠中から就学前まで切れ目のない支援が標榜され、「子育て世代包括支援センター」として、ワンストップサービス化しています。
学齢期となると、小中高校には、スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)が配置されています。公立学校にも私立学校にも相談機能があります。自治体の教育相談センターにおいても相談でき、複数の相談先があります。
児童・生徒のみならず保護者はSCに相談できます。都道府県のSCと基礎自治体のSCが配置されていることが多く、選ぶこともできます。学校配布の相談室だより等に記載があるのをご覧ください。保護者は子育てや家庭の相談ができ、担任や学校への要望を伝えて回答を得たり、お子さんの学校での様子を聞けます。必要に応じて。医療機関についての情報入手や、必要に応じて発達検査や特別支援教育へつながったりできます。
SSWは、SCより人数は少なく、各校区や教育相談センターに配置されています。学校からケース検討の要請があり応談となる場合が多いです。家庭環境からくる困り感や福祉支援・制度利用を必要とする場合にアウトリーチの対応が可能で、家庭訪問などもなされます。子ども家庭支援センターにつながったりもできます。
また、心理専攻のある大学の心理相談センターの相談機能も活用できます。大学のHPに情報が出ています。プレイセラピー等を受けられたり、子どもと保護者、双方のカウンセリングを受けられます。通学する学校のSC等に聞いても、近隣の大学の心理相談センターの情報が入手できます。
大学生であれば、大学に学生相談やさまざまな相談機能があり、相談できます。修学にかかる相談、心理的な相談、就職に関する相談、法律相談、ハラスメント相談等、各種の相談機能があり、大学のHPに記載があります。お子さんに相談資源の活用を促されるといいでしょう。
企業勤務の方であれば、産業医や、企業内相談室に、産業カウンセラーやキャリアカウンセラーが配置されていたり、組織内にない場合、外部EAPと契約がされていて、相談できるでしょう。配偶者が企業内の産業医やカウンセラーに雇用されている配偶者のアルコール問題や経済的な問題、休職等の相談もできるでしょう。
依存先=相談先が多いほうが自立していると言われます。活用できる相談機能を知って、活用していき、お子さんについて一緒に考えていける人的資源・社会資源を増やしていきましょう。